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来鶴廬だより(過去記事)-戻る-


 
 前回は話が固かったので、一息入れて私の好きな飲み屋の話です。

 JR鶴見駅西口から線路づたいに川崎に向かって歩いて二分ほどのところに赤ちょうちんが提っている焼鳥屋さんがあります。
 店の名前は「多味」」 昭和三十年の中頃私の青春時代は灰色でしたが、ここは唯一灯りがともって心が和む店でした。

 屋台の店で歯切れのよい、キップのよいおかみさんが一人できりもりしていました。

 「シマヅさん、シマヅさん・・」 と特徴のある、やや甲高い声で可愛がっていただきました。私のおふくろと同年輩でもあり、家が真前でもあったので、店が閉まってから遅くまでビールを1ダースほど空けて話相手になってもらっていることも度々でした。

 ニッケル製の容器に酒(銘柄は「笹一」のみ)を入れ、燗をしてコップに注いでもらい焼き鳥をほおばって一人悦に入っていました。
 雨が降り風が吹いてくると戸板がきしんで雨漏りがしてくる、居合わせたお客さんが何かと手伝うという気のおけない店でした。

 その当時、駅付近には屋台の店が数軒あって結構にぎわっていました。今のお店に改装し、新装になったときお祝いに贈ったのが写真のものです。

多味1


 今から四十年も以前のこと、上質の色紙に何とかやっつけたものですが、今は煙に煤けて茶色に染まり仲々良い味がついてきました。隷書で「和気満堂」、語句のごとくいつもお客さんはいっぱいで賑わっており値段も低廉で味が良いと評判の店です。

多味1


 写真に写っているのは二代目の現主人、初代の息子さん。横は三代目になるであろうご令息です。奥様は仲々魅力のある人なのですが、写真機のレンズから逃げてしまわれました。

2003年6月  



 


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