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| | 楊維楨の書 | |
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この現蔵上海博物館楊維楨の草書七絶詩軸を静かに眺めていると、三十代のはじめ明朝末倪元璐の書に心を動かされたと同様の感動を喚起させられる。 楊維楨が生きたのはやはり動乱の元朝末である。元璐は気骨横溢した書であるが楊維楨も情念を生まに出している。 時代の変革期に生きる人の書はかくあるのか。長い時間かかって築かれた伝統的な価値の基準にゆさぶりをかけている。反逆とも言える。 | ||
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この作の構成を見てみる。 各四行の行頭がいずれも字形が均しく大きい。大胆不敵だ。通常なら大小、潤滑の変化をつけるところである。とんと意に介さない。 三行目「一壷天地小」の空間のとり方は驚くばかりである。「地」の最終画は長くほとんど垂直に下りて末尾は右に曲がって右隣りの「人」に重なっている。そして「小」の布置の何としたことか。奇想天外の妙手である。少し誇張して言えば悠久な天より落ちてきた隕石の如くである。 落款の「老鉄」はまったくかすれてはっきり判読できないほどの筆触である。その姿は周辺の書の様相と異にしている。 中国で楊維楨の書を「粗頭乱服」と評しているが正に然りである。その書は元人の奇崛の癖を更に甚しく、一具奇怪の感を抱かせる。 この作と向き合っているとわたしの書など底の浅い薄っぺらなものである。 百尺竿頭一歩を進めるということばがあるが痛感するばかりである。 |
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2009年2月 碧嵓
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